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2013年3月 7日 (木)

東北学院大の法科大学院 2014年度以降の募集停止決定

学校法人東北学院(仙台市青葉区)は3月7日の理事会・評議員会で、東北学院大法科大学院の2014年度以降の学生募集停止を正式決定して、文部科学省に届け出た。

この専門職大学院の辿った道を考えてみる。


法科大学院は、専門職大学院であって、法曹に必要な学識及び能力を培うことを目的とするものをいうと定められている。法科大学院の制度は、2004年4月に創設された。政府は、2002年3月に閣議決定した司法制度改革推進計画において、新司法試験の合格者数を、2010年頃に3,000人程度とすることを目指すとした。数字だけが独り歩きして、意味を持たないことが世の中にはままある。そもそも3,000人が本当に必要かという事実についても異議が多くみられる。
旧司法試験に合格する為に長く試験勉強をし、多くは合格することなく若い時間を無駄に知るという指摘がある。無駄かどうかは本人が考えることで、無駄になる可能性を知りつつも受けずにはいられない気持ちを他人が止めるものではない。その気持ちを整理して新た道を選ぶのは若者に課せられた義務と言ってもよい。将来のことを心配して話をするのは家族であったり、周囲の受験者のことを大事に思う人にだけ許された行為で、法律を作る者が受験者の将来を慮ってやる必要はないし、まったくもって大きなお世話である。貴重な人的資源が無駄になるというのもナンセンスで、自分の力量の見定めが出来ない者は優秀であっても事故を起こす。不合格を繰り返すことで見定めが出来たのなら有意義な時間であり、出来ないのならそれほど社会が求める優秀な人材ではないと言えるから、国家が心配することはない。そんな人でも輝くことはいくらもある。個人の行く末について徒に国家が介入するのは好ましい姿でない。
新司法試験では、法科大学院修了後、5年以内3回という新司法試験の受験回数制限を設けている。前記の心配を別にすれば、法科大学院教育の効果測定を考えたとき、5年を過ぎると、効果が薄れてしまうという考えがあるようである。数年で効果が薄れるのはワクチンみたいだが、効果は有る無しで評価するものではなく、継続するようにするものである。5年で薄れる前提なら制度も、大学院教育にも価値が無いといってもよかろう。そうはいっても制限することで決断する切っ掛けを得る人もいるだろうから全部マイナスということもない。
ただし、司法試験受験に法科大学院修了が必要となるとそれなりの価値を求めたい気持ちは理解できる。学費は初年度に、国立大学なら100万円、私立大学なら100~250万円というところである。大学院修了が学歴として評価されやすい理科系学部と違い、ともすればマイナス評価になる文科系で、司法試験に合格しなかった場合に価値のない学歴が追加されただけと言われるのは厳しい。司法試験の為に必要な大学院で他では役に立たないというなら、旧司法試験の予備校と変わるところはない。予備校で100万円払うのならもう少し指導してくれと言いたくなるところかもしれない。学歴として評価されることが無いのが問題で、その対策をしたら受験予備校機能が落ちるというなら、大学院の存在異議が問われる。実際は国家公認の予備校なのだから、対策としては国家公認を外せば済むのだが、自分達のしたことを決して否定しない役人がコントロールしているとそうはいくまい。

2012年の試験結果について記す。新司法試験の合格者数は2,102名(昨年2,063名)で、合格率は約25.1%(前年23.5%)で、1.6ポイント上昇した。合格率が上がったのは新司法試験になって初めてという。大学院の合格率の上位1~10までを示す。

順位 大学院名     人数 合格率
1  予備試験合格者  58   68%
2  一橋大学       77   57%
3  京都大学      152   54%
4  慶應義塾大学   186   54%
5  東京大学      194   51%
6  神戸大学       60   46%
7  大阪大学       74   42%
8  中央大学      202   41%
9  首都大学東京    40   40%
10  愛知大学      14   38%

予備試験合格者とは、法科大学院を経ないで司法試験を受験した者である。これが最も成績が良いのだからこれに統一してしまえばよいと門外漢は考えるのだが、一度決めると変えられない大人の事情もあるだろうから、気楽に言うほど簡単ではないのだろう。合格率で見ているので制度の変更による影響かなと思ってしまうが、合格者数の上位10を示す。

順位 大学院名     人数
1   中央大学     202
2   東京大学     194
3   慶應義塾大学  186
4   早稲田大学    155
5   京都大学     152
6   明治大学      82
7   一橋大学      77
8   大阪大学      74
9   神戸大学      60
10   予備試験合格者 58

これだと昔の司法試験のイメージに近いかもしれない。昔は合格率ではなく合格者数で表していたと思うから当然ではある。合格率の下位20を示す。

55  法政大学     17  11%
56  東海大学      5  10%
56  駒澤大学      5  10%
58  東北学院大学   4  9%
59  久留米大学    3  9%
60  大東文化大学   5  8%
61  駿河台大学    8  8%
62  信州大学      4  7%
63  桐蔭横浜大学   6  6%
64  島根大学      2  6%
65  獨協大学      5  6%
66  大阪学院大学   3  6%
67  香川・愛媛     2  5%
68  國學院大学     3  5%
69  大宮法科大学   6  5%
70  京都産業大学   3  5%
71  明治学院大学   5  5%
72  愛知学院大学   2  5%
73  龍谷大学      4  5%
74  神戸学院大学   1  3%
75  姫路獨協大学   0  0%

この中で募集停止が決定されているのは、姫路獨協大学(75)、神戸学院大学(74)、明治学院大学(71)があり、これに今回の東北学院大学(58)が加わった。この他に、大宮法科大学院大学(69)が、桐蔭横浜大学(63)に吸収が決定されている。
合格率も合格者数も下位の大学は継続が難しい状況になっている。考えてみれば、旧試験で合格者が少ない大学が新試験になって突然多くなる理由も見当たらない。むしろ制度を変えて、法科大学院を修了することが実質的に条件になっている状況の中で、合格するには都市部の大学に行くことが必要となってしまうことが、法律家のサポートについても地域格差を生むことになるのが問題である。今回の東北学院大学で東北地方には東北大学のみになった。合格するまで金が掛りすぎるのも問題だし、合格しても仕事がないのは問題だ。いろいろなところに問題があるようなので、修正会議を始める時期にあると思う。


札幌高裁も違憲判決だった。いくつ違憲判決が出るのだろうか。

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