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2013年3月30日 (土)

米ギブソンがティアックを買収

ギターの世界大手メーカーである米Gibson Guitar Corp.(ギブソン)とティアックは、資本・業務提携を行うことで合意した。ギブソンがティアックを買収し、グループ企業にする。

ギブソンというのはどのような会社なのだろうか。TOBと合わせて考えてみる。

4月1日にギブソンが株式公開買付(TOB)を開始し、ティアック株の株式の過半数を取得する。TOBは21営業日で終了する見込みとしている。ティアックの現在の筆頭株主は企業再生ファンドのフェニックス・キャピタルである。フェニックス社とジャパン・リカバリー・ファンドは、両社が保有するティアックの株式1億5,744万株(発行済株式の54.4%)を、1株あたり31円でギブソンに売却するとしている。

ティアック(6803)の3月29日の終値は56円である。ダイエーのTOBの件でも発生したディスカウントTOBである。株価が急激に回復しているので、少し前から計画していたTOBは軒並みディスカウントになってしまいそうである。株価は輸出産業で上がりが大きく、輸入の会社では事情が違うのだろうが。ティアックの時価総額は約168億円である。ティアックの経営状態を確認したほうがよさそうである。売上高と経常利益を各年3月31日の決算日で推移を示す。単位は億円で、1億円未満は切り捨てした。

■ティアック連結決算 【単位:億円】
  年  売上高 経常利益
 1998 1,200     36
 1999  1,431    51
 2000  1,398    22
 2001  1,550    19
 2002  1,530  △55
 2003  1,390  △23
 2004  1,178    15
 2005  1,033  △64
 2006    847     8
 2007    680     3
 2008    618    13
 2009    511     1
 2010    407     0
 2011    368     3
 2012    266     0

三鷹駅の近くの会社だと思っていたら、多摩センターに会社は移転していた。2007年のことだという。昔のオーディオファンにはオープンリール式のテープレコーダで有名な会社であった。つまり磁気記録の会社である。テープはプラスティックフィルムの上に磁性体が塗布されている。この時代の磁性体はフェライト(酸化鉄)の紛体である。信号処理にもいろいろノウハウがある時代である。オープンリールならICではなくトランジスタの時代だろう。そんな時代の製品だから、オーディオ用のアンプも差別化した製品であったのだろうと思われる。磁気記録の延長線上に、バックアップ用のテープ装置(汎用機=大型のコンピュータに用いられる)があり、PCの拡大によりFDDの事業が拡大したのだろう。
FDDの生産を2010年に国内の三社が公表している。三社は、YEデータ、ティアック、SONYである。半導体フラッシュメモリの容量が大きくなり、データが納まり切らない状況が発生する急速に市場を失う。利便性の低下が切っ掛けであるが、近年ではネットワークに接続しているのでリムーバブル媒体の必要性そのものが下がっているといえよう。CD-R以降のオプティカルディスク(DVDやBlueRayも)コンピュータ用の市場では似た状況になる。試しにFDの国内生産推移を調べた。出所は経済産業省のフレキシブルディスク国内生産推移である。結果を下に示す。

■ FD国内生産推移
 年   FD(百万枚)
 1985     214
 1986     372
 1987     535
 1988     774
 1989     771
 1990   1,240
 1991   1,197
 1992   1,874
 1993   2,388
 1994   2,369
 1995   2,514
 1996   2,439
 1997   1,842
 1998   1,712
 1999   1,461
 2000     907
 2001     223
 2002      73
 2003      62

FDは1995年にピークを迎えて以降急速に市場を失っているのが分かる。主な記憶装置がHDDになり、アプリケーションはCD-ROMでHDDにインストールする方式が普通になるとFDは出番を失ったのだろう。ティアックの業績もこれに連動していたと思われる。PCの外付けFDDなどの周辺装置もずいぶん手がけたようだが業績に貢献するところまでは至らなかったようだ。PC関連の依存度を下げる経営方針を最近はとっていて、アップル社の装置の関連品を扱っているという話を聞いたが、数字には表れていない。周辺装置は安いから大量に扱わなければならず、販売関係に強みのある会社でないと厳しそうである。
高級オーディオを製造していた会社にナカミチと言う会社がある。この会社は1990年頃に光磁気ディスクの評価装置を販売して大変ヒットした。光磁気ディスクの特許を見るとナカミチの装置が標準的に使われていたのが分かる。しかし、ナカミチは1997年に香港の会社の傘下に入り、2002年に倒産している。光磁気ディスク評価装置の売上では会社全体を支えきれなかったということのようだ。しかし、この時期にオーディオ関係の会社で話をするとナカミチさんは……、というのを良く聞いたものである。その光磁気記録の技術を用いているオーディオ用のMDプレーヤもSONYが販売終了をアナウンスする状況であるから、コンピュータとネットワークの発展を見誤る(正しく予想した会社などないのだろうが)と会社の存続にさえ影響してしまう。

話を戻して、ティアックの取締役会はこのTOBについて賛同意見を表明しているという。株式取得の完了後、ティアックはギブソン・グループの一員となる。ギブソンというのは、ギターを製造する会社であり、名称を Gibson Guitar という。2012年の売上高が4億6,506万ドル、営業利益が3,595万ドルである。為替を1ドル95円とすれば、売上が約440億円で、営業利益が約34億円となる。在りし日のティアックの売上からすれば小さな会社に吸収されることになる。価格.comで検索すると、ギブソンのエレキギターは5万円から20万円というのが売られているようである。もちろんもっと高い商品もあるだろうが、その手の物は台数が出ないのだろう。電気的な信号として処理されるものは、デジタル化されPCで処理されるのだろうから、オーディオをPC周辺技術を有する会社と組むと新しい提案ができるのかもしれない。ギブソンはオンキョーにもすでに出資している。
ギブソンは「楽器から始まり最も革新的な録音技術やAV機器まで展開し、妥協なきエンターテイメントの体験を提供することで、世界最大のミュージック・サウンド・ブランドになるというギブソン社の目標の実現」に近づくと説明しているが、どんな事業に向かうのかは十分説明されているとは言い難い。社長が並んでギターを弾いている状況ではないように思う。


ティアックの社長は51歳と若いのだが、苦労が多いご面相である。

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