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2013年3月24日 (日)

消費者金融と法律事務所で過払い返還に密約

朝日新聞によると、消費者金融業者に払い過ぎた借金の利息を取り戻す過払い金返還請求をめぐって、業者が、請求を代行する法律事務所と手を結び、債務者の一部に不利益となる協定を秘密裏に交わす例があることが分かった。返還額を減らして手早く和解する内容であり、業者のメリットは大きく、法律事務所も多くの依頼を処理できる。しかし、債務者は知らないまま、返還額を減らされることになるという。

記事によると、過払い金の返還請求を主に扱う大都市圏の弁護士や司法書士の法律事務所と消費者金融業との間で、包括和解協定が結ばれているというものである。この協定によって、代理人として法律事務所は個別案件毎に対応するのが原則だが、大量の案件を短時間で処理でき、業者にも支払い金額を抑えることができるような条件で協定を結んでおけば、双方に不満が無く作業が完了することになる。合理的な制度に見えるが、実際には返還を請求した債務者が受け取るべきものを業者と法律事務所で山分けする図式であり、法律事務所には職業倫理上の問題があると言われても仕方ないだろう。業者はこのような協定の存在を否定していて、法律事務所は回答を拒否しているという。

過払い金返還請求がなぜ生じたかを整理する。グレーゾーン金利というのが存在していた。金利の上限は法律で制限されているが、法律が二つありその間がグレーゾーンと呼ばれる。貸金業の上限金利は利息制限法上で元本によって三段階に決まっている。
 (1) 元本10万円未満      年20%
 (2)10万円以上100万円未満 年18%
 (3)100万円以上         年15%
別の法律として出資法があり、この上限利率は年29.2%である。よって、100万円以上借りていたら15%と29.2%の間がグレーゾーン金利となる。
グレーゾーン金利を適用しても、貸方と借方もお互い納得した上で行っていれば合法であると言う考え方を取っていた。これをみなし弁済と呼ぶ。みなし弁済で説明することで、グレーゾーンは合法となり、消費者金融は儲かる状態が続いていた。ただし、取り立ての厳しさについて社会問題化したから、利息制限法の金利は段階的に見直されてはいた。しかし、シティズ判決(2006年1月13日最高裁第二小法廷)で、「上限を超える金利について、事実上強制されて支払った場合、特段の事情がない限り、無効」という判断がでて金融業者が敗訴した。この判決(所謂「シティズ判決」)等の最高裁判決によってみなし弁済の成立する余地はほぼ無くなり、グレーゾーン金利での貸し出しは実質的に無効となっている。 それまで、両者の合意があれば合法としていたものを、より厳密に解釈することを最高裁が決定した。
20%を超えた金利で取引していればすべて非合法だから、払い過ぎた金利を取り戻せることになったのが近年の返還請求訴訟の根拠とするところである。そうはいっても取引には時効があって、最終取引から10年が経過する (取引の中断の扱いはここでは触れない) と過払い返還請求は出来なくなる。少々古い数字であるが、2008年に東京地裁に訴えられた過払金返還請求事件は12,873件あり、全国では66,000件程度であると推定される。同年の消費者金融専業7社の利息返還額は5,000億円を超える。返還金は潜在的に20兆円とも言われる。こレくらいの市場規模があれば法律家は押し寄せることだろう。返還訴訟は比較的簡素な方法で済むので、債務者に多くの金額が戻るようになっていると言われている。

新聞記事の図式は予想された話である。グレーゾーン金利はなくなり、融資の年収による制限が加わった。10年の時効があることからすれば、この大量の返還訴訟対象も期限付きの市場である。つまり、法律事務所は効率的に大量の事案を処理したいのである。大量に処理する為に、テレビなどのメディアを使って広告を打つ。処理をする社内の体制も構築する。しかし、限度はある。一方、消費者金融業者は、大量の請求をされたら事業が立ち行かない。金利の制限が加わり、経営状況も悪いなかで訴訟対応に多くの人を割く余裕もない。つまり、両者が話し合う、普通の言葉なら談合する余地ができていた。通常の個別訴訟の案件であれば、法律事務所は少しでも多くの返還を実現することで成功報酬が増える。しかし、消費者金融の融資額が一件当たりとしてみれば大きくないから、成功報酬が期待薄なのである。
この事件 (事象と言った方が良いのだろう) で不快なのは、法律家が儲けている図式である。業者が持っているであろう資金は債務者が本来持つべきものだから債務者に戻しましょうは正しい。しかし、債務者はそのとき他から借りることが出来ずに消費者金融を頼った者である。金利に不満があれば、もっと有利な条件の銀行に融資して貰えばよいのだが、それが叶わない (審査が通らなかったり、時間を要したり) で高利の金に頼ったのである。この業者が無くなったら銀行は貸さないのは同じだから、それこそ闇金に行くしかない。資金が動いて助かった人が利益を受ける権利者であるべきだと考える。それからすれば権利者は、債務者と業者のいずれかでしかない。業者は違法行為だと指摘するだろうが、高いリスクのある者に融資した者には権利がある。少なくとも法律家の取り分はここにはない。最高裁のもろもろの判決によって、中小企業の経営者が運転資金を借りるのに不便になったなどの弊害は出ている。

若いOLが高いブランドバッグを買うのに消費者金融を利用することを批判するのは簡単だが、課長になって一戸建てを買うのにローンを組むのも、クルマをローンで買うのも行為としての差は無いに等しい。立場を替えればどれも愚かな行為である。借りたい者があるから貸すは正しい。金利の上限を法律で制限するのは妥当だろうと考えるが、当時グレーゾーンとして合法として扱っていたものを、非合法にして返還させれば社会的な混乱が大きいのは容易に想像が付く。判例になる前に和解するよう政府が指示すれば良かったのだが、純粋に法律の組み立てで進めば最高裁の判決となるのだろう。最高裁も思い切って1年の融資なら、1年ものの国債金利の10倍を超えれば違法くらい言ってくれれば良いのにと思う。それなら住宅ローンでも金利が取り戻せるかもしれない。
あれだけテレビでCMを流していれば怪しい商売であるのは明らかである。怪しいことを正当化する理論武装は商売であるから強かろう。法律家がこの畑で商売できるバブル期間はもう少々残っているようだ。まさか、その後で法律事務所が消費者金融に融資を頼むこともあるまい。


借りた金を返す。金利が高ければ借りなければ良い。本来はそれだけの話である。

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