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2013年2月28日 (木)

インサイダー取引:日興証券事件 横浜地裁判決

SMBC日興証券が担当した株式のTOBを巡るインサイダー取引事件で、金融商品取引法違反に問われた会社役員K被告人 (67) に対し、横浜地裁(朝山芳史裁判長)は2月28日、懲役2年6月、執行猶予4年、罰金300万円、追徴金約1億円 (求刑:懲役3年、罰金300万円、追徴金約1億円) の判決を言い渡した。Kに未公表のTOB情報を漏らしたとして、同法違反で起訴された同証券元執行役員Y被告人 (51) =公判前整理手続き中= については共謀を否定した。Yが無罪になる可能性も出てきた。

2月7日のブログでこの裁判の訴因変更について述べた。判決が出たので感想を記す。


判決では、Kについて「犯行は大がかりで悪質」と指摘し、Yに関してはインサイダー情報を提供したと認定した。その上で、
 (1) Kが自らの判断で株取引していた。
 (2) Yは売買益を得ていない。
などとして「株取引に重要な役割を果たしていない」と検察側主張を退けた。
Kは2010年から2011年に、物流会社など三社のTOB情報をYから入手して、67,000株を約6,400万円で買い付け、情報が公表された直後に売りぬいて約3,600万円の利益を得たとされている。

前回のブログでは訴因変更がなされたことを扱った。検察の起訴内容では、KとYが共謀してインサイダー取引を行ったこととしていたが、これを分離するように裁判長が促したものである。検察は2月13日に訴因変更をしているから、今回の判決はその流れからすれば必然の結果であると言える。
事件についてまとめると、Kは大筋で認めていて今回有罪になった。一方Yは全面否定していて、まだ裁判が始められないでいる。Kは利益を得ている事実があるから、争わずに執行猶予を取ることが重要とする裁判戦術を取ったのだと思われる。実際、執行猶予が付いている。求刑の懲役3年というのも、執行猶予を付けて下さいと言うメッセージに聞こえる。素人には聞こえないが、裁判所にいる職業的相場師の耳には届くことだろう。Kの裁判については、伝統的な裁判所の典型的な進行であるのに対し、Yの裁判 (いまだ公判は始まっていないのだが) は、新しい時代の裁判なのかもしれない。検察にほどほど協力すれば、執行猶予が確実な事案だからとささやかれても、やっていないものはやっていないと返答するのは、ある意味正しい権利の主張である。(この部分は想像によるものでフィクションです)
Kは情報を不正に得て利益を出したので有罪となると、情報を入手できる立場になかったのだから協力者は必要である。しかし、この情報提供者であるYは無罪となる。Kの犯罪を構成するにはY協力が必須と考えて、検察はKとYは共同で作業をしたとして起訴した。Yはこの情報により利益を得ておらず、KとYには金銭的なやり取りがなく、心情的な貸し借りによっていた。インサイダー取引が不正な情報入手により経済的な利益を得ることを罰する考えなので、Yを罰するにはKとの関連が必要なのである。Yが無罪なら、Kも無罪を主張できそうだが、実際に利益を出している事実が動かせないからこの論理で争うのは苦しいのだろう。実際的な執行猶予を確実にするを選択したということなのだろう。
Kの有罪は妥当だと思うが、Yに刑事罰を加えるのは難しいと感じる。しかし、証券取引市場の秩序を壊したことはYの方が重罪である。証券取引所が鉄火場であるような印象を与えてしまってはいけない。それこそ、堅気の旦那衆が気楽に参加できると表に書いてあれば、ここは素人が出入りする場所ではないと感じるものだ。情報を漏らした人に対しては刑事罰より、民事で処理する方が馴染むだろう。証券取引所は、市場の信頼を失墜させたとして情報提供者に損害賠償を請求すれば良い。上場している企業も、証券会社も同じシマで資金を動かしていることに違いはない。市場の秩序が乱されたことで生じた遺失利益を請求するのは当然の行為だろう。情報を漏らしたら自分の全資産が取り上げられるというなら、怖くて漏らせないだろう。この位のことをして当然だと思う。ちょろちょろ漏れているから出来ないのだと思われたら、素人さんは近付かないことになる。本当に価値のある財産というのは、思わぬところで失われるものである。

判決は全国扱いになっているようである。それでももう少し高い関心があって相当だと思うのではあるが、マスコミの考えは違うようである。毎日沢山の事件が発生していてどれを選ぶかが情報伝達側の価値を最初に決定する要因だと思う。横並びに扱えば責任を問われないという発想は、自分の存在意義を否定するものである。自己否定するのは、極左なら命を失うが、一般の会社員なら何を失うのだろうか。何も失わないのは、全てを失うのに等しい。


解説記事は専門誌でなければないのだろうか。

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