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2013年2月 6日 (水)

犯罪白書 2012年版-5

取り留めのない話が続いているが、本日でお仕舞いにしよう。ということで、気になったが書いていない話を少し。引き続き犯罪白書より。

少年犯罪についてからとする。少年犯罪は年齢によって扱いが変わる。少年は20歳未満のものが対象であるが、14歳以上では家庭裁判所に送致される。14歳未満では、児童相談所へ通告し、必要な場合により児童相談所経由で家庭裁判所へ送致される。少年院に送致可能な年齢の下限は、おおむね12歳以上と2007年の少年法改正でなった。以前は14歳以上である。家庭裁判所の審判の結果によって、少年院送致、保護観察、児童自立支援施設から、最もふさわしい処分が選択されることになる。特に凶悪な場合には、逆送が行われ検察官により起訴され、地方裁判所にて刑事裁判として執り行われることになる。
2007年の少年法改正で適用年齢を下げる改正がなされている。この改正には否定的な意見を多く見たが、最近は話題になることもなくなったようだ。改正直後のコメントとして、少年が対象であるが故に自己弁護能力が乏しく、警察の取り調べで間違った自白が発生し、結果冤罪につながるという指摘があった。そういうこともあるだろうと思う。ただし、自己弁護能力が不足するのは年齢が高くてもある。年齢に依らず冤罪の発生の可能性はある。法律改正が犯罪の抑止力になるというのにも否定的で、そもそも犯罪の損得を勘定できる理性が働くなら犯罪には手を染めない。何も考えずに犯罪するか、理性的な損得を超えて犯罪をするかであるなら法律の規定の対象外の話になる。
2011年の少年の一般刑法犯検挙人員と少年院への入院員数を示す。

 年齢                検挙人員 少年院入院人員
年長少年(18歳以上20歳未満)  14,611     766 (32.2%)
中間少年(16歳以上18歳未満)  27,589    1,392 (56.8%)
年少少年(14歳以上16歳未満)  35,553    1,328 (54.4%)
触法少年(     14歳未満)   16,616      ―

検挙人員は、ここ9年は減少傾向にある。上記は2歳刻みに等しくなっていて、年齢が上がると減少する傾向になっている。少年院に似たものとして鑑別所がある。鑑別所は、罪を犯した少年がどのような理由で犯罪行為に至ったかを医学や心理学、教育学と言った視点から解明することを担っている。その結果は、家庭裁判所側に報告され、審判に影響する。一方、少年院は、家庭裁判所の審判として少年院送致が言い渡された少年が入院する施設である。ついでに加えると少年院には、初等・中等・特別・医療と四種類がある。初等・中等・特別は後の方が非行の度合いが高い少年が入院する施設である。医療少年院は、覚せい剤やシンナー等の薬物で体に疾患がある場合などの理由で入院する施設である。矯正の可能性が高いのは、鑑別所、初等、中等、特別の順になり、医療は特別と同じくらいだろうと言われているようだ。矯正の困難さは少年の育ってきた環境要素も大きく、退院後のことまでカバーするのは難しいということなのだろう。
少年院に入院時の少年の状況を男女別に割合で示す。

     中学在学  中学卒業 高校在学  高校中退  高校卒業他
 男    15.9%    30.2%    17.1%     32.5%     4.3%
 女    24.0%    28.0%    15.8%     29.2%     3.0%

高校進学率が97%を超えているという文部科学省の発表からすると、高校へ進学しない(できない)少年が犯罪に関係する割合は高そうに見える。

少年犯罪に対して、少年であるが故に特に区別する必要はないと考えている。つまり大人と一緒である。理由は子供も大人と同じく扱われるべきだと考えるからである。しかし、氏名の公表は許されないと考える。これは大人も同じである。罪は裁判で決定されるが、氏名を公表する罪というのはない。氏名引き回しの刑を刑法に規定すれば良いが、判決がでるまでは推定無罪であるなら捕まった犯人の氏名などの公表は差し控えられるべしと考えるのである。そうもいかない事情は理解しているつもりなので、殊更に主張するつもりはないが、少年の権利を重視する立場の人達は、矯正や更生についても考えを示して貰いたいものだと思う。逆に、厳罰化を求める人達は、罪を犯した少年を排除すれば済むと考えているように思えてしまうから、それでどんな社会を構築したいかまで言及すればよかろうと考える。グループで捉えれば前者の側は想像が付くが、後者の側は見えてこない。この見えない不安が、この考えを支持したくない気持ちにさせるのである。

外国人犯罪について考える。
外国人の犯罪件数は増えているような印象を持つが、実際には減少傾向にある。凶悪犯罪に外国人が関わっていることがあると、外国人だからという理由で犯罪を起こしたような印象を持ってしまうが、これは外国人差別につながる考え方で危険である。正しい分析をしなければならない。来日外国人と、その他の外国人の一般刑法犯検挙人員を示す。来日外国人とは、永住資格のある者と米軍構成員など及び在留資格不明者を除いた者をさす。ざっくりと言えば、その他は永住資格者と理解して良い。

■外国人による一般刑法犯検挙人員(2011)
 来日外国人     5,889
 その他外国人   5,092

永住資格者は日本人と同じ扱いをしても良いだろうから、来日外国人に注目して検挙罪名の割合を下に示す。窃盗が多いのが特徴的である。遺失物横領も窃盗と同じグループとすれば全体の八割になる。この来日外国人の検挙件数で最も多い窃盗は、空き巣が35.2%、万引きが30.9%と多い。

■来日外国人の検挙件数罪名(総数:12,582件)
 殺人 強盗 傷害・暴行 窃盗  遺失物横領 文書偽造  その他
  0.2  0.6   6.3     73.2    6.9       1.6     11.2

来日外国人被疑事件の検察庁終局処理人員は、2005年から減少傾向にある。2011年は 13,012人であった。この内訳は、公判請求4,264、略式命令請求1,351、不起訴6,489、家裁送致908である。それなりに起訴されている。そうすると高い確率で有罪になるのがこの国の司法制度であるから、刑務所に入る者もでるだろう。刑務所の扱いとして、外国人受刑者のうち、日本人と異なる処遇を必要とする者はF指標受刑者として、その文化及び生活習慣等に応じた処遇を行っている。F指標入所受刑者人員は、2011年で男が479、女が112である。食事の好き嫌いなら無視できるが、宗教上の理由だと無視できない。まあ、日本人受刑者でも、疾病の為に食事を変えた対応をすることはあるだろうから、それと同じ考え方と思えばよいのかもしれない。贅沢をさせる施設ではないが、配慮しなければいけない要件は結構ありそうだ。
この国の国民の受刑者を矯正するよりも手間暇を掛けて、当然費用は税金である、外国人を矯正することにどんな価値を見出すかを考えると釈然としないところがある。しかし、外国人であるが故に法的な扱いを分けることは差別であり許されないのも理解できる。受刑者が釈放された暁には本国に送還されることになるのだろうから、送還してしまえば良いとも思うが、罰を確定しないで送る訳にはいかないのは当然である。逆の差別になる。二国間で受刑者の本国での矯正条約を結べばできるだろうが、法体系が異なる国で成立させるのは難しいだろう。外国人だからといって差別しない扱いをするのは、この国が正しいことをしていると言って良かろう。それが理由で不良外国人が日本で犯罪行為をするようでは困るのだが。
ついでだから、強制送還について少し調べた。不法残留等の入管法違反者に対して、日本から退去させる退去強制手続が執られることになる。2011年に入管法違反により退去強制手続が執られた外国人は、20,659人であった。違反事由別では、不法残留が15,925人で最も多く、不法入国2,862人、資格外活動542人と続く。対象者の国籍等別では,中国(30.7%)、フィリピン(21.0%)、韓国(12.7%)の順である。この多くは日本に仕事を求めて来たのに、観光で入国している人なのだろうと想像される。一度強制送還されると、日本に入るのは非常に難しくなると聞く。正しい外国人と不良外国人を区別するのは難しいだろうから、この防止には鎖国するか差別するかになる。国際化が進む中での対応は難しい。
犯罪白書からそのまま引用する。

『入所度数の多い入所受刑者ほど無職率が高く、保護観察期間中の再非行による保護処分の取消しで保護観察が終了した者の割合は、無職の保護観察処分少年・少年院仮退院者の方が有職の者より圧倒的に高い。また、出所受刑者全体の中で、帰住先不明等の満期釈放者は、1/4程度であるのに対し、再犯期間が3月未満の再入受刑者のうち、前刑出所時に帰住先不明等の満期釈放であった者は、過半数を占め、出所後短期間で再犯に至りやすい傾向がある。これらのことから、仕事や帰住先のない者が再犯に陥りやすいことがうかがわれるところであり、再犯防止と円滑な社会復帰にとって、就労や住居等の安定を図ることは重要である。』

更に引用を続ける。

『刑務所出所者等の社会的な孤立を防ぎ、長期にわたって見守り、支えていくことが必要であり、そのためには、社会復帰支援の重要性とその具体的な取組について、国民の理解を広めることも非常に重要である。犯罪をした者もいずれは地域に戻ってくる。自ら犯した犯罪や非行を真摯に悔い改め、立ち直りを目指して地域住民の一人として再び生活を始めようとする刑務所出所者等を地域が排斥するようであれば、その社会復帰はもとより再犯防止はおぼつかない。地域住民の理解を基盤に、地域社会の様々な分野・場面で刑務所出所者等を受け入れ、彼らを支える取組に国民全員が協力・参加あるいは支援することが促進されれば、広く国民に理解され、支えられた社会復帰を実現し、これを持続可能なものとすることができるであろう。それは、再犯を防止し、安全・安心な社会を作るということにとどまらず、刑務所出所者等を社会に貢献する一員として再統合し、積極的に国民全体の利益の増大を目指す営みにもなる。』

正しい考え方だと思う。しかし、総論では賛成しても各論になるとそうはいかない。地位社会という言葉が出るが、地域の連携が薄くなって久しい。先の震災で協力することの重要性を認識したとしても、いざ実行となると困難な問題が多い。大都市周辺は人口密度が高過ぎる一方で、地方では過疎化が進んで人口が少なすぎる地域がある。古き良き時代を口にするなら、一極集中を是正することも対策課題になるかもしれない。
昔は良かったは建設的な言葉ではない。今の方が良いこともたくさんある。どうするかの答えはまったくもって見出せないでいるが、犯罪の問題は社会のあり方と同じ列の問題である気がした。そんなところに、だらだらと繰り返しデータを眺めていたことの成果があったとしてこの項を終わりにする。


警察白書も眺めたが、犯罪ばかり追うのに疲れてしまった。

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