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2013年2月 5日 (火)

犯罪白書 2012年版-4

少々飽きてきた感はあるのだが、刑務所内での矯正から考えてみることにしよう。

公益財団法人全国教誨師連盟の資料を引く。冒頭に掲げるのは、「矯正施設の被収容者の宗教的欲求に応え、こころの豊かさと改善更生を促す教誨」とある。その次にあるのは変えてはいけないだろうから、そのままを記す。下記の通り。

『全国教誨師連盟は、教誨師が矯正施設において被収容者に対し精神的・倫理的・宗教的な教誨活動を円滑に行えるよう支援することを本旨としています。
教誨は自己の信ずる教義に則り、宗教心を伝え被収容者の徳性を涵養するとともに、心情の安定を図り、被収容者には自己を洞察して健全な思想・意識・態度を身につけさせ、同時に順法の精神を培い、更生の契機を与える。もって、矯正の実を上げ、社会の安定に寄与することを目的とします。』

刑務所などの施設は国の機関として運営されているので、国が主体となっての宗教活動は憲法上の制約により許されない。このような施設での矯正活動に倫理的、宗教的な側面があるから、宗教家が馴染む仕事であると思う。というより、この仕事を宗教家がしないのなら、宗教は弱者を救済する精神がないと言われないかと心配してしまう。そこで、教誨師について公益財団法人全国教誨師連盟の数字から引用した。まず、登録団体を示す。

■教宗派別の教宗団数
宗教    宗派    宗団数
神道系            5
仏教系  天台       4
      真言       11
      浄土       16
      禅宗       8
      日蓮       8
キリスト系 カトリック   1
      プロテスタント 51
諸教             2

宗派の後に、系の文字があったが省略している。宗派も略称になっているのはご容赦願う。数が少ない印象がある。篤志宗教家である教誨師が行っている事情があるとしても、宗教法人は表向き (本当は表も裏も無くだが) 営利団体ではないのだから、全ての宗教法人とはいっても地理的な問題を考慮すれば全国的な活動をしているなら、どういう形か別にして関係していて当然のように思える。宗教法人は文部科学省が所管する宗教法人の数を調べた。2010年12月31日付のデータである。文部科学省が所轄する団体と都道府県知事が所轄するものがあるが、単純に複数の都道府県に活動拠点を持つ団体=大きな団体と考えてようようである。下に示す。

系統    包括宗教法人
神道系    127
仏教系    156
キリスト教系 61
諸教       30
計       374

教誨師の団体が106に対して374をどう理解するかだが、正直なところ差は小さいと感じた。キリスト教系の団体が多く活動していることがあるようだ。参加比率は、全体で28%に対し、神道系が4%、仏教系が30%,、キリスト教系が85%、諸派が7%となっている。宗教の選択は受刑者が自由に行うから、信仰の意識が薄いこの国ではどれを選ぶか迷うかもしれない。人との交流が制限される刑罰を課せられているから、外部との接触は有り難いだろうと想像するが、信仰と結ぶ付くかは分からない。そうでないなら、宗教的な倫理観を導くという矯正は難しいことになる。
団体の数より、人の数が問題なので、員数を調べた。これも全国教誨師連盟に依っている。

■活動する教宗派別教誨師の人員(2012年4月1日現在)
-----------------------
神道系        217人
 神社本庁      140人
 金光教        61人
 その他        16人
-----------------------
キリスト       262人
 カトリック      63人
 プロテスタント   199人
-----------------------
仏教        1216人
 天台         43人
 真言        151人
 浄土        680人
 禅宗        195人
 日蓮        149人
-----------------------
諸教          158人
 天理教        157人
 その他         1人
-----------------------
合計         1855人
-----------------------

こちらになると、宗教団体の数が多い仏教系が多い。刑務所の数が分からなかったので調べた。刑務所が全国に62、少年刑務所が7、拘置所が7で、支所が全国に8、拘置支所が104であるようだ。ただし、2008年の数字なので若干の違いがあるかもしれない。各県に一つはあるようだから、宗教法人として活動できない理由にはならない。篤志家の熱意というか、個人の心情に依存しているように思える。それで宗教法人が良いのかという強い疑問を感じるものの、それぞれの団体には別の考えもあるのかもしれない。心情的には宗教団体は、犯罪に流れてしまった弱い心と、恵まれない家庭環境に救いの手を伸ばす活動をして貰いたいものだと考える。そういう活動をする団体であるから、税制上の優遇措置があるのだと理解しているのだが。仏教が葬式仏教に実質的になったのは明治以前だと言われるし、初詣のお賽銭が重要な収入で、結婚式や地鎮祭が臨時収入になっていて、駐車場代 (これは課税対象らしい) で運営している宗教施設もあると聞く。観光収入が期待できるのは限られるから、宗教法人も楽ではないのだろう。完全に話が逸れた。
仮釈放になると保護観察 (3号観察) になる。保護司に活動報告を定期的に行う。この保護司というのは、政令で決められた保護区単位の保護司選考会で選ばれ任期は2年である。地方議会議員や公務員経験者、宗教家などが多いと言われる。2004年から法務省は76歳以上の人に再委嘱しないことにしたから、この年齢が実質的な定年になっている。2012年の保護司は48,221人で、平均年齢は64.1歳、女性比率は25.9%である。女性比率は1980年代は20%程度であったが、増加傾向にある。平均年齢は先の法務省通達の後に若返って62歳代まで下がったが、2007年から再び増加している。保護司は地域における犯罪予防運動にも係わりを持つ。保護観察には少年犯罪の保護観察 (2号観察) も多くあるから、非行の多い地域で保護司をすると忙しいと聞く。保護司は国家公務員であるが無給である。保護司のほかに国家公務員である保護観察官 (もちろんこちらは有給である) がいるが、全国で1000名程度であり、現場の業務にあたるのは600人くらいと言われる。専門に業務にあたる保護観察官が行えばよいというのは正しいが、それでは現場が回らないということになる。こういう票にならない話は選挙の話題にならないし、予算を増やすのはこのご時世では困難と決まっていて、苦労する現場と何も知らない政治家 (国も地方も) の不毛な議論が瞬間的に起きる図式になっている。
この国では、市場原理主義の流れ、所謂、新自由主義的な動きがいろいろなところであり、そのほころびも指摘されているが、そんな動きと無関係に、篤志家としての宗教家や、元受刑者の更生に協力する保護司がボランティアで継続して活動している。排除の論理を最強にすれば、外国人犯罪者は国外追放し、犯罪をしたら無期刑か死刑にするやり方になる。それは正しくない気がする。受刑者の数からすれば、一般の生活で接点があることは少ないと思われるが、全くないということでもない人数である。答えをまったく見いだせないでいるが、もう少し考えないといけないと思う。人権に関する一つのテーマに過ぎないが、自由を制限する可能性が高く簡単に決められるものではない。学んだことは、大きな事ばかり口にする政治家は仕事をしないが、本当の政治家は小さな仕事を黙ってやるということであろうか。

少年犯罪と外国人犯罪については次回行って、脱線続きの犯罪白書を終わりにしようと思う。


経済問題の方がアクセスが多いようだ。しかし、期待に反して、インサイダー取引の事案を調べているのである。

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